人生論

2005年5月29日 読書
ISBN:4042089267 文庫 米川 和夫 角川書店 2004/05 ¥420
世界的な作家として知られるトルストイ。彼の作家としての軌跡は「戦争と平和」「アンナカレーニナ」で絶頂を向かえる。その後、彼は、「イワンの馬鹿」をはじめとするロシア民話など、素朴な信仰を賞賛する物語を描く。ここにトルストイの謎がある。
本書は著者58歳のときに執筆されたものである。
これから、この書を読もうとする読者の中で、もしもあなたが、自らに満ち足りていると感じているならば、この書の中に、これといったものを見いだすことはまれだろう。また、この書は、ひどく混乱したものに見えてしまうかもしれない。理路整然と書かれているとは言いがたいと、しばしば指摘されているのだから。

「動物的生存のはかなさとまやかしを知り、愛というただ一つの真の生命を自分のうちにとき放すことだけが人間に幸福をもたらすのである」

「人生というものを解しない人々の活動は生涯、生存競争や、快楽の追求、苦痛の回避、のがれられぬ死からの逃避に向けられている」

この書は、今まで送ってきた自分の時間の総体にふと疑問が湧いた時、道に往き惑った時、また、途方に暮れた時、読むべき書物かもしれない。そこに、人生に処するための明確な答えを見つけることは、できないかもしれない。が、ある一つの道標、道しるべとしては、役立つかもしれない。
トルストイという作家、また人間は、一個の天才がいかにすれば、凡人として素朴で調和的な人生を送ることができるのかということに、恐ろしいまでに心血を注いだ、たぐいまれなる巨大な道のりだから。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

この日記について

日記内を検索